非常用発電機の点検費用は、1回の定期点検で約6万〜49万円が目安です。これは国土交通省の積算要領と令和8年度の労務単価を使い、東京地区のディーゼル発電機(300kVA以下)で当サイトが試算した税込の値で、容量と点検の周期で大きく変わります。
ここに負荷運転や内部観察等、部品交換の費用が別に加わります。負荷試験は公表価格で1回あたり約10万〜47万円の例があり、会社によって含まれる作業が違います。この記事では、国の積算基準で見た点検費用の組み立て方、負荷試験の公表価格、費用が上下する条件、6年周期で予算を組む方法、見積書で確認する項目を順に整理しました。
目次
非常用発電機の点検費用の目安
非常用発電機の点検費用は、定期点検の作業費、負荷運転などの運転性能の確認費、部品の交換費の3つに分けて考えます。1枚の見積書に全部が入っているとは限らないため、どの費用が含まれているかを先に確認してください。
| 費用の区分 | 主な中身 | 費用の決まり方 |
|---|---|---|
| 定期点検の作業費 | 消防法の機器点検・総合点検、外観・始動・運転状態の確認 | 容量・機関の種類・技術者の人数と時間 |
| 運転性能の確認費 | 負荷運転(実負荷・擬似負荷)または内部観察等 | 容量・設置場所・ケーブル敷設の距離 |
| 部品の交換費 | 潤滑油・冷却水・フィルター類・始動用蓄電池など | 交換する部品の数とメーカーの推奨交換年数 |
| 電気保安の費用 | 保安規程に基づく自家用電気工作物の点検 | 保安規程で定めた点検の内容と周期、受変電設備と一体の保安業務の契約で決まる |
点検会社によっては、消防法の点検と負荷試験を別の会社が担当しています。見積もりを並べるときは、同じ区分同士で比べることが大切です。
点検費用を国の積算基準で試算
国土交通省の建築保全業務積算要領には、自家発電設備を点検するのに必要な技術者の人数(歩掛り)が容量別に載っています。これに令和8年度の労務単価を掛けると、点検費用の組み立てが見えます。
直接人件費とは、点検に直接従事する技術者の労務数量に労務単価を掛けた費用です。国の積算では、これに直接物品費・業務管理費・一般管理費等・消費税を順に積み上げて業務費を出します。
| 容量(ディーゼル・低圧・ラジエータ式) | 6か月周期の点検1回 | 1年周期の点検1回 |
|---|---|---|
| 30kVA以下 | 約5.9万〜6.6万円(人件費 約3.5万円) | 約19.1万〜21.3万円(人件費 約11.2万円) |
| 30kVA超125kVA以下 | 約7.7万〜8.6万円(人件費 約4.6万円) | 約24.8万〜27.8万円(人件費 約14.7万円) |
| 125kVA超200kVA以下 | 約10.7万〜11.9万円(人件費 約6.3万円) | 約36.0万〜40.3万円(人件費 約21.3万円) |
| 200kVA超300kVA以下 | 約12.4万〜13.8万円(人件費 約7.3万円) | 約43.5万〜48.7万円(人件費 約25.7万円) |
試算の前提は、シリンダー数6の機関、東京地区の日割基礎単価(保全技師Ⅰ 30,800円・保全技師補 25,700円)、直接物品費率8〜12%、業務管理費率32〜36%、一般管理費等率8〜13%、消費税10%です。幅は経費率の下限と上限の差で、時間外や交通費は含みません。
1年周期の歩掛りに含まれない作業
積算要領は、1年周期の歩掛りに実負荷運転・調速機・予防的な保全策を含めず、必要に応じて見積もりで加算するとしています。6年周期の欄も「見積りによる」です。国の積算でも、運転性能の確認は別枠の費用という扱いになっています。
負荷試験の費用は公表価格で比べる
負荷試験の費用は、容量区分ごとの料金表を公表している会社があります。2026年9月14日に公式サイトで確認できた2社の掲載値を並べると、同じ容量帯でも2倍以上の差があり、含まれる作業の範囲も違います。
負荷試験とは、発電機に擬似負荷装置や実際の設備をつないで電気を取り出し、定格出力の30%以上で運転して性能を確かめる点検です。
| 容量区分 | A社(神奈川県鎌倉市・税別) | B社(東京都豊島区・一般価格) |
|---|---|---|
| 40kVA以下 | 98,000円 | 200,000円 |
| 80kVA以下 | 113,000円 | 270,000円 |
| 120〜125kVA以下 | 128,000円(120kVAまで) | 310,000円(125kVAまで) |
| 200kVA以下 | 148,000円 | 420,000円(250kVAまで) |
| 300kVA前後 | 178,000円(参考価格・300kVAまで) | 470,000円(330kVAまで) |
| 含まれるもの・条件 | 試験費・出張交通費・報告書作成費・諸経費を含む。200kVA超は現地調査 | 作業員2名・低圧はケーブル15mまで・養生なしが基本。地域により出張費、日祝・深夜は別途 |
A社は有限会社エフ・ピイ・システム、B社は株式会社ケイアイテクノサービスの公式サイトの掲載値です。B社の表には税込・税別の表示がありません。どちらもページの更新時期が示されていないため、現在の価格は見積もりで確認してください。
点検費用が上下する条件
同じ容量でも点検費用が変わるのは、作業の手間を増やす条件があるためです。積算要領も、機関の構成や付属設備に応じて歩掛りを増減させる規定を置いています。
- シリンダー数:1年周期の歩掛りは、シリンダー数4で90%、8で110%、12で130%、16で150%に増減します。
- ガスタービンの結合方式:2機1軸で125%、3機1軸で140%です。
- 高圧交流遮断器:1台ごとに保全技師Ⅰ 0.22人・保全技師補 0.30人を6か月周期の歩掛りに加算します。
- 地下タンク:燃料槽の地下タンクは、必要に応じて別の歩掛りで加算します。
- 設置場所:屋上や地階では擬似負荷装置の搬入とケーブル敷設が長くなり、負荷試験の費用が上がります。
- 作業日時:停電を伴う作業を土日や夜間に回すと、割増の対象になることがあります。
設置場所の条件は現地を見ないと決まりません。概算の段階では、機械室の位置、搬入経路、負荷装置を置ける場所を写真で伝えると、見積もりの精度が上がります。
点検費用は6年周期で予算化する
非常用発電機の点検は周期が重なっているため、毎年同じ金額にはなりません。運転性能の確認が6年に1回になったことで、特定の年に費用が集中します。6年を1単位にして予算を組むと、年度ごとの増減に備えられます。
| 点検・手続き | 周期 | 費用への影響 |
|---|---|---|
| 消防法の機器点検 | 6か月に1回 | 毎年2回発生する基本の作業費 |
| 消防法の総合点検 | 1年に1回 | 年1回、機器点検より作業が重い |
| 負荷運転または内部観察等 | 6年に1回(予防的な保全策を講じた場合) | 実施する年に負荷試験や内部観察の費用が加わる |
| 点検結果の消防への報告 | 特定防火対象物は1年に1回、非特定防火対象物は3年に1回 | 報告書の作成を点検契約に含めるか確認する |
| 予防的な保全策の部品交換 | メーカーの推奨交換年数ごと | 潤滑油・冷却水・フィルター類の交換費が発生する |
予防的な保全策は、潤滑油や冷却水、燃料フィルターなどをメーカーの推奨交換年内に交換する取り組みです。講じていない場合は運転性能の確認を毎年行うことになるため、部品交換の費用と負荷試験の回数を比べて選びます。周期の詳しい扱いは負荷試験の記事で解説しています。
点検費用の見積書で確認する項目
点検費用を比べるときは、総額より先に作業範囲をそろえます。安い見積もりが、報告書の作成や部品交換を含んでいないだけということは珍しくありません。次の項目が明記されているかを確認してください。
- 消防法の機器点検・総合点検、電気事業法の点検のうち、どれを対象にしているか。
- 負荷運転の方式(実負荷・擬似負荷)と負荷率、または内部観察等の実施範囲。
- ケーブル敷設の距離、養生、搬入経路の条件と、条件を超えた場合の追加料金。
- 出張費・交通費、時間外・休日の割増の有無。
- 点検票と消防への報告書の作成、測定値の記録を含むか。
- 不具合が見つかったときの修理と部品交換の見積もり方法。
点検項目そのものは点検項目の記事、法令ごとの義務は法定点検の記事で整理しています。
点検費用より更新を考える目安
点検のたびに部品交換や修理の費用がかさむようになったら、更新を比較に入れる時期です。発電機本体の公表価格は数百万円からで、年間の点検費用とは桁が違うため、残りの使用年数と合わせて判断します。
部品の供給終了を告げられた場合や、負荷試験で出力が出ない指摘を受けた場合は、修理を重ねるより更新の見積もりを並べたほうが判断しやすくなります。減価償却の年数と更新時期の考え方は耐用年数の記事、本体価格の実額は価格の記事にまとめています。
点検の依頼先を探す場合はメンテナンス会社の比較、入れ替えを検討する段階なら設置・更新会社の比較をご覧ください。機種の系統を確認するならメーカー10社の比較表が役立ちます。
非常用発電機の点検費用のFAQ
非常用発電機の点検費用は毎年同じですか?
同じではありません。機器点検と総合点検は毎年発生しますが、負荷運転または内部観察等は予防的な保全策を講じた場合で6年に1回です。実施する年に費用が加わるため、6年を1単位にして予算を組むと増減に備えられます。
負荷試験の費用は容量でどれくらい変わりますか?
公表価格の例では、40kVA以下で約10万〜20万円、300kVA前後で約18万〜47万円でした。会社によって出張費や報告書の扱い、ケーブル敷設の条件が違うため、含まれる作業をそろえて比べてください。
国の積算基準で出した金額は民間の相場と同じですか?
同じとは限りません。建築保全業務積算要領と労務単価は官庁施設の業務費を積算するための基準で、民間の見積もりを拘束するものではありません。作業量の目安として使い、実際の金額は複数社の見積もりで確認してください。
この記事を書いた人
執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部
非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。
最終更新:2026年9月12日
