非常用発電機とは、停電したときに原動機で発電機を回し、施設内の必要な設備へ電気を送るための設備です。消防用設備等の非常電源として設置する場合は、常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間が40秒以内であることが求められます。
仕組みを押さえておくと、見積書に並ぶ「制御盤」「始動装置」「燃料設備」が何のための費用かを判断できます。この記事では、停電を検出してから電気が届くまでの流れを追いながら、各部の役割、UPSや蓄電池との違い、仕組みから決まる点検の中身までを施設管理者向けに整理しました。
目次
非常用発電機とは何をする設備か
停電時に、消防用設備等や建築設備、業務の継続に必要な機器へ電力を供給する自家発電設備です。常時運転して電気を作る設備ではなく、停電という条件が成立したときだけ動く点が、常用の発電設備と違います。
電力会社からの受電が止まると、施設内の配電は切り替えを待つ状態になります。そこへ自前の電源をつなぎ、あらかじめ決めておいた負荷にだけ電気を送るのが、この設備の役割です。どの負荷へ送るかは設計時に決め、単線結線図に残します。
非常用発電機が動き出すまでの流れ
停電の検出、原動機の始動、電圧と周波数の確立、負荷への投入という順に進みます。自動でこの流れを完了させるため、始動用の電源と制御回路が別に用意されています。
| 段階 | 起きていること | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 停電の検出 | 受電の停止を制御盤が検出する | 検出する箇所と、切り替える回路の範囲 |
| 始動 | 蓄電池や空気で原動機を回し始める | 始動用蓄電池の状態、空気始動なら圧力 |
| 電圧の確立 | 規定の回転数に達し、電圧と周波数が整う | 消防用設備等では40秒以内という要件 |
| 負荷投入 | 切替装置が発電機側へ切り替える | 投入の順序、同時に立ち上がる機器の容量 |
| 運転の継続 | 必要時間まで運転する | 燃料の貯蔵量、冷却、換気の条件 |
この流れのどこかで止まると、設備があっても電気は届きません。始動用蓄電池の劣化や制御回路の不具合は、外観では分かりにくい部分です。定期的な試験運転で最後まで通して確認します。
仕組みを支える3つの構成要素
原動機、発電機、制御盤が中心です。加えて始動装置、燃料設備、排気設備、給換気設備が組み合わさって初めて運転できます。見積もりでどれかが抜けると、機器を搬入しても稼働させられません。
| 構成 | 役割 | 見積もりで確認する点 |
|---|---|---|
| 原動機 | 燃料を燃やして回転する力を生む | 方式、出力、指定燃料、冷却方式 |
| 発電機 | 回転を電気に変える | 出力、電圧、周波数、相数 |
| 制御盤 | 停電検出、始動、保護、切替を行う | 既設盤の流用範囲、保護装置、表示 |
| 付帯設備 | 始動装置、燃料、排気、給換気 | タンク容量、配管、消音器、換気量 |
原動機の仕組みはディーゼルとガスタービン
原動機には、燃料を燃やして生じた圧力でピストンを動かすディーゼル機関と、燃焼ガスでタービンを回すガスタービンがあります。どちらも「燃料の燃焼を回転に変える」点は同じで、冷却と据付の条件が変わります。
方式の違いは、冷却水設備の要否、振動、整備の内容に表れます。容量や設置場所の条件によって向き不向きが変わるため、方式名だけで決めず候補機種の仕様書で比べてください。比較の観点はガスタービンとディーゼルの違いにまとめています。
発電機と制御盤の仕組み
発電機は回転する磁界によって電気を起こす装置で、出力は電圧・周波数・相数の組み合わせで表されます。制御盤は停電の検出から負荷投入までを自動で進め、異常時には設備を保護する役割を持ちます。
出力の単位を混ぜない
kWとkVAは別の単位です。資料によってどちらで書かれているかが変わるため、比較表を作るときは単位をそろえてください。必要な容量の考え方は容量計算の記事で解説しています。
仕組みから見る始動方式と燃料
始動には、蓄電池のセルモータで回す方式と、圧縮空気で回す方式があります。どちらも「発電機を動かすための別の電源」が必要という点が共通で、ここが劣化すると停電時に始動できません。
- 始動用蓄電池は年数で劣化するため、交換時期を管理する。
- 空気始動の設備では、空気槽の圧力と漏れを点検で確認する。
- 燃料は貯蔵量と劣化の両方を管理する。
- 制御電源が別系統の場合、その電源の健全性も確認する。
燃料の種類と貯蔵量は、運転できる時間に直結します。軽油と重油の違いや届出が必要になる数量は燃料の記事で整理しました。
非常用発電機と非常用電源の違い
非常用電源は、停電時に電気を供給する仕組み全体を指す言葉です。非常用発電機はその手段の一つで、ほかに蓄電池設備や燃料電池設備などがあります。設備名と機能名を同じ意味で使うと、必要な機器が抜けます。
資料によっては自家発電設備、非常用発電設備という呼び方も使われます。指す範囲の違いは資料ごとに揺れるため、契約書や図面では対象の設備名と型式で特定してください。
消防法では、消防用設備等ごとに使える非常電源の種類と容量が定められています。発電設備でなければならない場合と、蓄電池設備でもよい場合があるため、設計者に対象設備との対応を確認してください。
仕組みで比べるUPSと蓄電池
無停電電源装置(UPS)は、停電の瞬間も電気を切らさないための装置です。非常用発電機は始動と電圧確立に時間がかかるため、瞬時の停止も許されない機器にはUPSを組み合わせます。
| 比較する軸 | 非常用発電機 | UPS・蓄電池設備 |
|---|---|---|
| 供給までの時間 | 始動と電圧確立の時間が必要 | 瞬時に切り替わる |
| 供給できる時間 | 燃料がある間は継続できる | 蓄えた容量の範囲 |
| 得意な用途 | 建物全体の必要負荷を長く支える | サーバーや制御機器を短時間つなぐ |
| 組み合わせ | UPSの後段で長時間を担う | 発電機が立ち上がるまでを埋める |
どちらか一方で足りるかは、守る機器が停止を何秒許容できるかで決まります。医療機器や通信機器では、電源システム全体として検討する必要があります。
常用と非常用で仕組みが変わる点
常用は日常的に発電して電気を使う運転、非常用は停電時に限って運転する使い方です。同じ発電設備でも、運転時間、燃料の消費、点検の内容、届出の扱いが変わります。
大気汚染防止法の届出では、常用か非常用(専ら非常時において用いられるもの)かを明らかにする必要があります。購入後に運用を変えると前提が崩れるため、計画段階で使い方を決めておきましょう。
仕組みから決まる点検の中身
停電時にだけ動く設備は、普段は動いていないため劣化に気づきにくい特徴があります。だから始動、電圧の確立、負荷投入という流れを、定期的に通して確認する点検が求められます。
消防法の点検では、機器点検と総合点検が定められ、運転性能に関する確認として負荷運転または内部観察等が6年に1回の周期で行われます。点検の内容は点検項目の記事、義務と報告は法定点検の記事で確認できます。
非常用発電機の仕組みで確認する点
仕組みを理解する目的は、自分の設備で何が抜けているかを見つけることです。停電から給電までの流れに沿って、担当者が答えられない箇所がないかを点検会社と確認してください。
- どの負荷へ給電するかが単線結線図で分かるか。
- 始動用電源の種類と、交換時期を管理しているか。
- 燃料の貯蔵量と、何時間運転できる前提かを把握しているか。
- 切替装置の動作を、試験でどこまで確認しているか。
設備の入れ替えを検討する段階なら設置・更新会社の比較、維持管理の相談先を探すならメンテナンス会社の比較が使えます。機種の系統はメーカー10社の比較表から確認できます。
非常用発電機の仕組みのFAQ
非常用発電機は停電したらすぐ電気が来ますか?
始動と電圧の確立に時間がかかります。消防用設備等の非常電源では、常用電源の停電から電圧確立及び投入までが40秒以内と定められています。瞬時の停止も許されない機器にはUPSなどを併用します。
非常用発電機と蓄電池設備はどちらが必要ですか?
守る機器が停止を何秒許容できるか、どれだけの時間支える必要があるかで変わります。短時間を切らさない用途は蓄電池やUPS、長時間の供給は発電機が担当し、組み合わせて使うことが多い設備です。
普段動かしていないのに点検は必要ですか?
停電時にだけ動く設備のため、始動から負荷投入までを定期的に通して確認する必要があります。消防法では機器点検と総合点検が定められ、運転性能の確認は6年に1回の周期で実施します。
この記事を書いた人
執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部
非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。
最終更新:2026年9月12日
