非常用発電機の燃料は、軽油、A重油、ガスのいずれかが使われます。軽油は消防法の第二石油類で指定数量1,000リットル、重油は第三石油類で2,000リットルと決まっており、貯蔵する量によって必要な手続きが変わります。
燃料は「どれを選ぶか」だけでなく、「どれだけ置けるか」「何年で入れ替えるか」まで含めて計画する対象です。指定数量を超えれば危険物施設の許可が必要になり、劣化した燃料を放置すれば停電時に始動しません。この記事では、種類の違い、届出の境目、備蓄量の決め方、入れ替えの周期を順に整理しました。
目次
非常用発電機の燃料は3種類
液体燃料の軽油とA重油、供給を受けるガス燃料が使われます。どれを使えるかは機種の仕様で決まるため、燃料から機種を選ぶのではなく、候補機種の指定燃料を確認する順序で進めてください。
| 燃料 | 消防法上の分類 | 設備側で確認すること |
|---|---|---|
| 軽油 | 第二石油類(指定数量1,000L) | タンク容量、少量危険物の判定、劣化と入れ替え |
| A重油 | 第三石油類(指定数量2,000L) | 同上。粘度や保温の条件は機種の仕様で確認 |
| ガス燃料 | 危険物には該当しない | 供給の継続性、遮断された場合の代替、ガス事業者との調整 |
燃料タンク容量は、必要な運転時間と設置スペース、危険物の手続きの3つで決まります。大きくすれば長く運転できますが、指定数量を超えれば許可が必要になります。
ガス燃料は貯蔵の手続きが不要になる一方で、災害時に供給が止まる可能性を検討します。液体燃料は自前で貯蔵できますが、その量に応じた規制がかかります。どちらが有利かは、施設の立地と必要な運転時間で変わります。
燃料に軽油と重油を使い分ける
軽油は小型から中型の機種で広く使われ、A重油は比較的大きな設備で採用されることがあります。同じ出力でも指定燃料は機種ごとに違うため、既設と同じ油種が使えるとは限りません。
更新時は油種の変更に注意する
入れ替えで油種が変わると、既設タンクと配管をそのまま流用できない場合があります。流用の可否は現地調査で判断してもらい、見積書に「既設タンク流用」と書かれていたら、どの部分を残すのかを図示してもらってください。
供給業者と手配の流れを決める
燃料の補給を誰が手配するかは、運用の問題です。災害時は供給が滞ることがあるため、通常時の納入業者と、緊急時の連絡先を分けて決めておくと動きやすくなります。
燃料の指定数量と届出の境目
貯蔵する量を指定数量で割った倍数が、手続きの分かれ目です。軽油1,000リットル、重油2,000リットルを基準に、5分の1未満、5分の1以上1未満、1以上の3段階で扱いが変わります。
| 指定数量の倍数 | 呼び方 | 必要な手続き |
|---|---|---|
| 5分の1未満 | 規制の対象外となる範囲 | 市町村条例の規定を確認する |
| 5分の1以上1未満 | 少量危険物 | 市町村条例に基づく届出 |
| 1以上 | 危険物施設 | 消防法に基づく許可 |
少量危険物とは、貯蔵し取り扱う量が指定数量の5分の1以上1未満にあたる場合の呼び方です。この範囲では市町村条例に基づく届出が必要になり、貯蔵の方法や設置場所の基準も条例で定められています。
複数の油種を置く場合は、それぞれの数量を指定数量で割った商を合計して判定します。予備のドラム缶を別置きしている場合も対象です。タンクの表示容量ではなく、実際に貯蔵する量で計算してください。
更新で数量が変わるときは再確認する
機種を入れ替えると、必要な燃料の量やタンクの容量が変わることがあります。倍数が1を超えれば危険物施設としての許可が必要になり、手続きの期間も工期に影響します。更新の計画段階で、新しい設備の貯蔵量を先に確認してください。
屋内タンク、地下タンク、屋外タンクでは適用される基準が別に定められています。既設のタンクをそのまま使えるかどうかは、容量だけでなく設置形態と経過年数でも変わるため、現地調査で判断してもらいましょう。
燃料の備蓄量と運転できる時間
必要な備蓄量は、どの負荷へ何時間供給するかを決めてから逆算します。タンクの容量だけで運転時間を断定しないでください。負荷の大きさが変われば燃料の消費も変わります。
- 停電時に給電する負荷の一覧と、それぞれの運転時間を決める。
- 候補機種の燃料消費量の条件を仕様書で確認する。
- 補給までに必要な時間と、補給の手段を決める。
- 消防用設備等の非常電源として必要な容量を満たしているか確認する。
「72時間」という数字が目安として語られますが、すべての建物に共通する義務ではありません。施設の用途、適用される要件、事業継続計画に応じて必要な時間を定義し、その根拠を記録に残しておきましょう。
燃料の劣化と入れ替えの周期
液体燃料は貯蔵しているだけで劣化します。水分の混入、スラッジの発生、微生物による汚染が起きると、フィルターの詰まりや始動不良につながります。動かしていない設備ほど、この点検が抜けやすくなります。
消防庁の点検基準では、潤滑油、冷却水、燃料フィルター、潤滑油フィルターなどをメーカーが指定する推奨交換年内に交換する予防的な保全策が示されています。燃料そのものの入れ替え周期は、保守会社と機種の仕様に基づいて決めてください。
軽油の保存できる期間は、保管の条件や添加剤の有無で変わります。一律の年数で決めず、機種の仕様と保守会社の指定に従ってください。運転後の燃料補充を行った日も、同じ記録に残しておくと管理が途切れません。
入れ替えの記録を残す
実施日、対象、数量、担当会社を記録に残すと、次の更新検討や保守会社の変更時に引き継げます。タンク内部の清掃を同時に行うかも、あらかじめ計画に含めておくと当日の作業が滞りません。
燃料の補給を災害時に手配する
貯蔵量を超えて運転を続けるには、外から燃料を運び入れる必要があります。災害時は道路の通行止めや需要の集中で供給が滞ることがあるため、通常時の納入業者とは別に手配の流れを決めておきます。
- 納入業者との連絡先と、時間外・休日の受付方法を確認する。
- タンクローリーが進入できる経路と、駐車できる場所を図面で押さえる。
- 受け入れ口の位置と、給油作業に必要な立会いの有無を決める。
- 優先供給の契約が可能かを、業者に確認する。
補給の手順は、担当者が交代しても実行できるよう文書に残します。連絡先、必要な書類、作業の手順を1枚にまとめ、防災計画と同じ場所に保管しておくと、緊急時に探す時間を減らせます。
運転時間の前提を共有する
「何時間動く設備なのか」を施設内で共有できていないと、補給の判断が遅れます。満タン時の想定運転時間と、補給までに許容できる時間を一覧にして、設備担当と防災担当の双方が見られる形にしてください。
非常用発電機の燃料設備の点検
燃料は機器本体と別の設備として扱われます。タンク、配管、ポンプ、油面計、受け皿まで含めて点検の対象に入っているかを、保守契約の範囲で確認してください。
| 点検する対象 | 見るところ |
|---|---|
| 燃料タンク | 漏れ、腐食、油面計の表示、通気管の状態 |
| 配管・継手 | にじみ、緩み、支持金具の状態 |
| フィルター類 | 交換時期、目詰まり、交換記録 |
| 貯蔵量の管理 | 現在量、少量危険物の届出内容との一致 |
点検や燃料管理を任せる会社を探す場合はメンテナンス会社の比較をご覧ください。設置時の基準は設置基準の記事、必要な手続きは届出の記事で確認できます。方式による燃料の違いはガスタービンとディーゼルの比較にまとめました。
機種の候補から燃料を確認したい場合はメーカー10社の比較表が起点になります。
非常用発電機の燃料のFAQ
軽油を何リットルまで置けば届出は不要ですか?
軽油の指定数量は1,000リットルです。その5分の1にあたる200リットル以上を貯蔵・取り扱う場合は少量危険物として市町村条例に基づく届出が、指定数量以上では消防法の許可が必要になります。
非常用発電機は72時間動かす必要がありますか?
すべての建物に共通する義務ではありません。施設の用途と事業継続計画に応じて必要な運転時間を決め、その時間を満たす燃料の貯蔵量と補給手段を計画してください。
貯蔵している燃料は交換が必要ですか?
液体燃料は貯蔵中に劣化し、フィルターの詰まりや始動不良の原因になります。入れ替えの周期は機種の仕様と保守会社の指定に従い、実施日と数量を記録に残してください。
この記事を書いた人
執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部
非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。
最終更新:2026年9月12日
