非常用発電機の設置基準は1つの法律にまとまっていません。消防法の非常電源、建築基準法の予備電源、電気事業法の自家用電気工作物、燃料に関する危険物の規制という4つの系統が同時にかかります。
消防用設備等の非常電源として設置する場合は、常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間が40秒以内であることなど、具体的な数値の要件があります。この記事では、施設管理者が自分の建物の条件を確認するために、どの法令のどこを見ればよいかを順に整理しました。設置義務の判断、設置場所の条件、給排気と換気、燃料タンクの扱いまでまとめています。設計事務所や工事会社と打ち合わせる前に、自分の建物で何が決まっていて何が未確定かを切り分ける材料としてお使いください。
目次
非常用発電機の設置基準を決める法令
設置基準は、設備の目的によって適用される法令が変わります。消防用設備等に電気を供給するのか、建築設備の予備電源なのか、業務の継続が目的なのかを先に決めると、確認すべき条文が絞れます。
| 法令 | 非常用発電機に対する位置づけ | 主に決まること |
|---|---|---|
| 消防法 | 消防用設備等の非常電源 | 設置できる非常電源の種類と容量、構造・性能の技術基準 |
| 建築基準法 | 建築設備の予備電源 | 非常用照明や排煙設備などに必要な予備電源の種類と容量 |
| 電気事業法 | 自家用電気工作物 | 保安規程の届出、電気主任技術者の選任、工事や維持の基準 |
| 消防法(危険物) | 燃料の貯蔵・取扱い | 燃料タンクの容量に応じた許可・届出、設置場所の基準 |
4つは重なって適用されます。消防法の非常電源に該当する設備であっても、電気事業法の対象から外れるわけではありません。設計段階で、どの法令の窓口にいつ相談するかを工程表に入れておきましょう。
設置基準の中心は消防法の非常電源
非常電源とは、常用電源が停電したときに消防用設備等を作動させるために設けておく電源です。消防法では設備ごとに使える非常電源の種類と容量(運転時間)が定められ、屋内消火栓設備ならその設備を有効に30分間以上作動できる容量が求められます。
| 確認する項目 | 消防法で求められる内容 |
|---|---|
| 始動までの時間 | 常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間が40秒以内 |
| 容量 | 消防用設備等を有効に作動させる時間。屋内消火栓設備では30分間以上 |
| 構造・性能 | 昭和48年消防庁告示第1号「自家発電設備の基準」に適合すること |
| 外箱 | 鋼板製で、板厚は屋外用2.3mm以上、屋内用1.6mm以上 |
数値は設備ごとに違う
必要な運転時間は設置する消防用設備等によって変わります。スプリンクラー設備、非常警報設備、排煙設備では条件が異なるため、建物にどの設備があるかを一覧にしてから確認してください。所轄消防への事前相談で、対象設備と非常電源の組み合わせを確定させます。
非常用発電機の設置義務があるか判断する
設置義務は建物の用途、規模、収容人員、階数などで決まる消防用設備等の設置義務から派生します。非常用発電機そのものに一律の設置義務があるわけではありません。まず建物にどの消防用設備等が必要かを確定させます。
- 建物の用途区分と延べ面積、階数、収容人員を整理する。
- 設置が必要な消防用設備等と、それぞれに必要な非常電源を洗い出す。
- 建築基準法で予備電源が必要な設備(非常用照明など)を確認する。
- 蓄電池設備など、発電機以外の非常電源で満たせる部分がないかを見る。
用途変更や増築で条件が変わることがあります。テナントの入れ替えで用途区分が変わった場合は、既存の設備で足りるかを再確認してください。判断は所轄の消防機関と建築主事、設計者の3者で詰めるのが確実です。
設置基準で見る設置場所と離隔距離
設置場所の条件は、機器の保護、点検のしやすさ、周囲への影響の3つで決まります。キュービクル式か機械室に据え付けるかで、確認する図面も変わります。
機械室に据え付ける場合
不燃材料で区画された室に設置し、点検や部品交換ができる空間を確保します。壁や他の機器との距離は、告示の基準に加えてメーカーが示す整備空間の指定も確認してください。扉の寸法と搬入経路は、将来の更新工事にも関わります。
屋上や屋外に置く場合
床荷重、支持方法、防水、塩害や積雪などの環境条件を設計者に確認します。揚重の経路と作業スペースが取れるかは、設置時だけでなく更新時にも問題になります。近隣に住宅がある場合は音の伝わり方も先に検討しましょう。
給気と排気の経路は、発電機の運転条件に直結します。吸気口が塞がれる配置、排気が別の開口部へ回り込む配置は避けてください。機器の寸法だけで設置可否を判断しないことが大切です。
非常用発電機の燃料タンクと危険物の基準
燃料の貯蔵量によって手続きが変わります。軽油は第二石油類で指定数量1,000リットル、重油は第三石油類で指定数量2,000リットルです。貯蔵量を指定数量で割った値が基準になります。
| 指定数量に対する倍数 | 扱い | 必要な手続き |
|---|---|---|
| 5分の1未満 | 規制の対象外となる範囲 | 市町村条例の規定を確認 |
| 5分の1以上1未満 | 少量危険物 | 市町村条例に基づく届出 |
| 1以上 | 危険物施設 | 消防法に基づく許可が必要 |
複数の油種を置く場合は、それぞれの数量を指定数量で割った商を合計して判定します。タンクの容量ではなく実際に貯蔵する量で考え、増設や別置きのドラム缶も計算に入れてください。屋内タンクと地下タンクでは基準が別に定められています。
設置基準で見る給排気と換気
原動機は燃焼のために大量の空気を必要とし、運転中は熱と排気を出します。給気、排気、換気の経路が確保できていなければ、機器の寸法が収まっても計画どおりに運転できません。
| 確認する項目 | 図面で見るところ |
|---|---|
| 給気 | 吸気口の位置と有効開口面積、外気を取り込む経路 |
| 排気 | 排気管の経路、消音器の位置、排気口の高さと向き |
| 室内換気 | 運転中の室温上昇を抑える換気量、換気扇の電源 |
| 周囲の開口部 | 排気が他の給気口や窓へ回り込まない配置 |
屋内設置で見落としやすい点
機械室に据える場合、室内の温度が上がりすぎると出力が落ちたり保護装置が働いたりします。換気設備の電源が停電時にどこから供給されるのかも、単線結線図で確認してください。発電機は動いても換気が止まる構成では、連続運転ができません。
屋外設置で確認する点
屋外に置く場合は、排気の向きと近隣の窓の位置関係、冬季の吸気口の閉塞、塩害や粉じんの影響を見ます。近隣への音の伝わり方も配置で変わるため、対策の要否は騒音の記事と併せて検討してください。
設置基準の確認を工事会社に依頼する
法令の解釈と現地の条件は、図面だけでは判断できないことがあります。所轄消防との協議、電気の届出、危険物の手続きを誰が担当するかを、契約前に工事区分表で決めておきましょう。
- 所轄消防への事前相談と設置届の提出を担当するのはどちらか。
- 電気主任技術者の選任や保安規程は施設側で手配するのか。
- 燃料タンクの許可・届出を含む範囲か。
- 試験と引き渡しの資料に、点検で使う記録様式が含まれるか。
設置や入れ替えの相談先は設置・更新会社の比較にまとめています。設置後の点検義務は非常用発電機の法定点検、必要な手続きの一覧は非常用発電機の届出で確認できます。容量の決め方は容量計算の記事をご覧ください。
機種の候補を先に見たい場合はメーカー10社の比較表から、発電方式と製品区分をたどれます。
非常用発電機の設置基準のFAQ
非常用発電機はどの建物にも設置義務がありますか?
一律の義務ではありません。建物の用途・規模に応じて必要になる消防用設備等や建築設備に、非常電源・予備電源が求められることで設置が必要になります。まず必要な設備を確定させてください。
始動までの時間に決まりはありますか?
消防用設備等の非常電源として設置する場合、常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間が40秒以内であることが求められます。
燃料タンクを置くと届出が必要ですか?
貯蔵量を指定数量(軽油1,000リットル、重油2,000リットル)で割った値が5分の1以上1未満なら少量危険物として市町村条例に基づく届出、1以上なら消防法の許可が必要です。
この記事を書いた人
執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部
非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。
最終更新:2026年9月12日
