非常用発電機のガスタービンは、燃焼ガスでタービンを回し、発電機を駆動する方式です。ガス燃料だけを使う設備という意味ではありません。ディーゼルと比べる際は、冷却、吸排気、振動、燃料、保守の条件をまとめて確認します。既設機の銘板や図面を見ながら、メーカーの仕様書と比較できるよう、確認項目も具体的にまとめました。
この記事では、仕組みと長所・注意点を整理し、新設や更新時に施設管理者が用意する資料まで解説します。大規模施設に向くという説明だけで方式を決めず、自分の建物の負荷と設置条件に合うかを判断するための比較ガイドです。
目次
ガスタービンとディーゼルの比較
ガスタービンは回転運動、ディーゼルはピストンの往復運動を利用する原動機です。一般的な特徴の違いはありますが、必要容量と設置方式によって結果が変わるため、候補機種の仕様書で比較することが基本になります。
| 比較する軸 | ガスタービン | ディーゼル |
|---|---|---|
| 動力の取り出し方 | 燃焼ガスでタービンを回す | 燃焼圧力によるピストン運動を回転へ変える |
| 冷却の条件 | 自己空冷式では冷却水設備が不要 | 冷却方式に応じた水・放熱設備を確認 |
| 設置の比較 | 本体だけでなく吸排気と整備空間を見る | 本体・冷却・排気設備と整備空間を見る |
| 燃料 | 液体燃料・ガス燃料など機種の仕様で確認 | 採用する機種が指定する燃料を確認 |
| 保守 | タービン・補機・始動装置などを確認 | エンジン・冷却系・始動装置などを確認 |
上の表は方式の一般的な比較で、個別製品の性能を保証するものではありません。例えば「ガスタービンのほうが必ず安い」「同じ容量なら騒音対策が不要」とは言えません。設置する場所や運転条件を揃えた、機種別の見積もりが必要です。
容量の数字だけを横に並べない
比較資料には、発電出力の単位、定格条件、周波数、電圧を明記してください。kWとkVAを混在させた表では、そのまま大小を比べられません。運転時の負荷だけでなく、電動機などを始動する際の条件も設計者へ伝える必要があります。
日立インダストリアルプロダクツは、ガスタービンとディーゼルの性能・特徴を比較して公開しています。寸法や重量の特徴は容量・仕様によるため、一般的な比較を足掛かりにしつつ、候補機種の外形図と据付条件まで取り寄せましょう。
ガスタービン発電機の仕組み
ガスタービンとは、圧縮した空気と燃料を燃焼させ、そのガスのエネルギーを回転力として取り出す原動機です。非常用発電設備では、その回転力で発電機を駆動し、停電時に必要な負荷へ電力を供給します。
圧縮・燃焼・回転の流れ
空気を取り込み、圧縮機で圧縮した後、燃焼器で燃料を燃やします。生じた高温のガスがタービンを回し、その力の一部を圧縮機へ、残りを外部の動力として取り出すという流れです。発電用途では、その動力を発電機に伝えます。
川崎重工業は、軸の構成が異なる1軸式と2軸式の仕組みを公式に説明しています。実務では方式名を暗記するより、導入する設備の制御、始動、給電切替がどう動くかを、取扱説明書と図面で確認することが役立ちます。
発電機本体の外にも必要な設備がある
非常用電源は原動機と発電機だけで構成されるわけではありません。始動装置、制御盤、燃料設備、排気設備、給換気設備などが組み合わさります。どれか一つを別工事として見落とすと、必要な機能が揃うまで運用を始められません。
更新工事の見積書では、既設の盤や配管を流用する範囲も確認してください。本体の置き換えが可能でも、既存設備との接続条件がそのまま適合するかは別の問題です。撤去から接続・試験までを担当する窓口を決め、工事の境界を文書に残しましょう。
ガスタービンの燃料と運転時間
「ガスタービン」のガスは、タービンを回す燃焼ガスを指し、都市ガス専用という意味ではありません。使用できる燃料、必要な貯蔵量、補給方法は製品の仕様と運転計画で確認し、名称だけで判断しないでください。
使用燃料と供給方法を仕様書で確認する
同じガスタービンという分類でも、燃料の仕様を一括りにはできません。燃料タンクを使う設備か、ガス供給を利用する設備か、複数燃料に対応するのかを候補機種ごとに確認します。既存のタンクや配管を使い続けられるかも、施工会社へ調査を依頼する項目です。
機種名と燃料の記載を施設側の台帳に残しておくと、燃料の手配や保守会社の変更時に役立ちます。担当者が交代しても設備条件を引き継げるよう、取扱説明書や納入図書の保管場所まで整理してください。
運転時間は燃料量だけでは決まらない
必要な運転時間を考える際は、どの負荷へ供給するかを先に決めます。負荷が変われば燃料消費の条件も変わるため、タンク容量だけで稼働時間を断定しないでください。設計者には運転中の負荷想定と、補給ができる時間帯や方法も伝えます。
「72時間」という数字を見かけても、すべての建物・機種に共通する性能や一律の義務だと受け取らないことが大切です。施設の用途、適用される要件、事業継続計画に応じて、必要な継続時間を定義します。災害時に誰が補給を手配するかも運用計画に含めましょう。
- 候補機種の使用燃料と燃料消費量の条件を確認する。
- 保管・補給の担当、供給業者、連絡先を決める。
- 既存タンクの容量と状態、設置場所を調査する。
- 燃料だけでなく始動装置や制御の電源も確認する。
ガスタービンの長所と注意点
ガスタービンの検討では、冷却水設備の要否や振動、据付条件が比較材料になります。一方で吸排気の計画、機器費用、整備時の作業範囲も必要なので、本体の長所だけで導入を決めないようにしてください。
冷却水の管理を減らせる機種がある
川崎重工業のカワサキPUシリーズは自己空冷式で、冷却水を必要としないと案内しています。冷却水の管理や配管工事を比較する材料になりますが、これを「換気が不要」「設備保守が不要」と読み替えてはいけません。運転に必要な空気と排熱の経路は別に検討します。
振動と音は設置条件まで含めて比べる
回転機械としての特徴は、建物へ伝わる振動の検討に関係します。ただし施設の利用者や近隣への音の影響は、防音パッケージ、排気消音器、設置位置などで変わります。比較するときは音圧の数値だけでなく、測定距離や運転条件を揃えて確認してください。
屋上に置く案と地上の機械室に置く案では、建築側の条件も異なります。重量、支持方法、保守員の動線、機器を搬出する際の経路などを、設計者に図面で確認してもらいましょう。静かさや小ささを一つの形容詞で比較するより、実際に必要な対策を並べるほうが判断に使えます。
整備の費用と停止時間を先に確認する
通常の点検とは別に、主要部品の交換や大きな整備が必要になることがあります。初期費用だけでなく、どの時期にどの作業を想定するか、その作業中の電源をどう確保するかを保守提案で確認してください。保守会社と機器の供給窓口が異なる場合は連絡の流れも整理します。
ガスタービンの設置場所と機種選定
ガスタービンの選定では、必要な負荷と継続時間、設置空間、吸排気、搬入経路、維持管理の条件を合わせて判断します。大規模施設に向くという一般論だけでは、個々の建物に適した容量や機種は決まりません。
| 確認する資料 | 施設管理者が整理する内容 |
|---|---|
| 負荷一覧 | 停電時に供給する設備、電圧、始動条件、優先順位 |
| 単線結線図 | 既存電源、切替箇所、保護装置、他のバックアップ設備 |
| 配置・建築図 | 本体の設置位置、床荷重、点検空間、搬入経路 |
| 給排気の図面 | 吸気、排気、換気、周囲の開口部との関係 |
| 運用計画 | 必要な運転時間、燃料補給、立会い、保守体制 |
データセンターや病院でも用途を分ける
止められない設備を持つ施設では、発電機だけでなく、停電発生から発電機が給電を始めるまでの扱いも考える必要があります。瞬時の停電が許されない機器には、UPSなどを含む電源システム全体の検討が必要です。発電方式を変えるだけで無停電になると判断しないでください。
病院の医療機器、施設の消防設備、通信機器では、それぞれ必要な電源の条件が異なります。施設名で一括りにせず、供給先の機器と許容する停止時間を負荷一覧に書き出すと、設計者や管理部門との打合せを進めやすくなります。病院に固有の設置基準と災害拠点病院の要件は病院の非常用発電機の記事で整理しています。
小型設備で方式を変える場合も比較する
既存がディーゼルだから必ず同じ方式にする、あるいは新しい方式だからガスタービンに変える、という決め方は避けましょう。同じ供給条件で、機器費・工事費・保守費・設置条件を比較します。既存の冷却設備や燃料設備が健全に使える場合は、それを流用する案も検討対象です。
新設を相談する窓口は非常用発電機の設置会社比較にまとめています。候補を絞る前に、各社が設計、据付、電気接続、試験のどこまで担当するのかを確認してください。
ガスタービンの点検とメンテナンス
ガスタービンの負荷運転が不要とされる点検基準があっても、点検・整備が不要になるわけではありません。適用される法令とメーカーの保守計画を分け、始動や切替、部品の状態を継続して確認する必要があります。
負荷運転の扱いは点検基準を確認する
消防庁が公開する平成30年の点検方法改正では、ガスタービンを原動機とする自家発電設備の負荷運転を不要としています。同資料は、改正された項目以外の点検も必要であると示しています。営業資料の「負荷試験不要」という短い表現だけで、保守契約を解除しないでください。
施設にどの点検が適用されるかは、設備の用途と管理条件を確認して整理します。詳しくは非常用発電機の法定点検と頻度をご覧ください。電気主任技術者や消防設備の点検担当と、実施項目の抜け・重複がないか確認しましょう。
メーカーが示す整備の区切りを確認する
ヤンマーのガスタービン保守契約案内では、設置後15年を経過した非常用ガスタービンについて、パワーモジュールの交換メンテナンスを推奨しています。これは同社の整備提案であり、すべての発電機に共通する寿命や法定交換年数を示したものではありません。
保守会社には、採用機種の推奨整備時期、交換対象、作業に必要な停止時間を確認します。過去に主要部品を交換している場合は、その年月と対象を伝えてください。本体の設置年だけでは、現在の整備状態を判断できません。
点検の結果は「異常なし」の一言だけでなく、測定結果や指摘事項、次に予定する作業をまとめて保管すると、更新検討の資料になります。会社を変更するときも同じ記録を引き継ぎ、前回の点検・整備が不明なまま周期だけを延ばさないようにしましょう。
ガスタービン更新時の見積もり
既設機をガスタービンへ更新する場合は、本体の価格と、既存設備を使える範囲を分けて比較します。撤去、搬出入、基礎、配線、燃料、吸排気、仮設電源、引き渡し試験まで含む提案を受けて判断してください。
見積もりの前に、現地調査で図面と実物の一致を確認します。図面上は通れる搬入口でも、改修で配管が増えたり、間仕切りが追加されていたりする可能性があります。現状写真も添え、設備を運び出すときに必要な工事があるかを確認してもらいましょう。
「既設盤を流用」と書かれた場合は、どの盤と配線を流用し、どこを新しくするかを図示してもらいます。異なる会社の見積もりで範囲がずれていると、本体価格を比較しても総費用の判断になりません。契約前の段階で工事区分表を作ることを勧めます。
| 費用の区分 | 比較するときの質問 |
|---|---|
| 本体と制御 | 提示価格は同じ出力・電圧・運転条件か |
| 建築・搬入 | 開口改修、揚重、基礎補修を含むか |
| 関連設備 | 燃料配管、排気、換気、既設盤をどこまで変えるか |
| 工事中の電源 | 仮設機の運搬・接続・燃料・監視を含むか |
| 引き渡し | 始動と切替等の確認、完成図書、保守への引き継ぎを含むか |
工事中に必要な電力の整理は、機器を撤去する前に終えておく必要があります。仮設発電機が必要か、他の電源で補えるか、停止を許容できる回路はどれかを施設側と専門家で決めます。仮設機の設置場所や燃料管理まで含めた確認表は更新・交換会社の比較で紹介しています。
ガスタービンを選ぶ前の確認事項
方式を決める前に、負荷条件、設置条件、初期費用と保守費、工事中の電源、相談先の担当範囲を揃えてください。仕様が未確定なら、機器の価格だけで発注せず、設計・現地調査の段階から相談することが大切です。
ガスタービンの長所は、設置する建物の条件と合って初めて判断材料になります。冷却水の管理を減らしたい、振動条件を改善したいという目的がある場合も、吸排気や搬出入の工事がどの程度必要かを併せて確認しましょう。
- 負荷一覧と必要な運転時間が決まっているか。
- 候補機種の指定燃料と供給計画を確認したか。
- 設置・搬入・給排気の条件を現地で確かめたか。
- 定期点検と大きな整備の費用・停止時間を確認したか。
- 更新案と修理継続案を比較できる資料があるか。
相談先を探す際はメンテナンス会社の比較から、機器の整備を扱う会社とメーカー保守の違いを確認できます。設備の型式を先に伝え、対象機種への対応可否と担当範囲を回答してもらうと、見積もりの依頼先を絞りやすくなります。
ガスタービン発電機のFAQ
非常用ガスタービンは都市ガス専用ですか?
都市ガス専用という意味ではありません。ガスタービンは原動機の方式を指します。使用できる燃料は機種ごとに異なるため、候補製品の仕様書で確認してください。
ガスタービンなら停電せずに電力を供給できますか?
方式名だけでは無停電を保証できません。停電から始動、給電、切替までの条件を確認し、瞬時の停止が許されない機器にはUPSなどを含む電源システム全体を検討する必要があります。
ガスタービンなら冷却設備の検討は不要ですか?
自己空冷式では冷却水が不要でも、吸気・排気や室内の換気、周囲温度、整備空間の検討は必要です。候補機種の据付条件を確認してください。
この記事を書いた人
執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部
非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。
最終更新:2026年9月12日
