非常用発電機の蓄電池(始動用蓄電池)の交換時期は、HS形で5〜7年、MSE形で7〜9年が目安です。これは蓄電池メーカーが25℃で使った場合の期待寿命として公表している年数で、蓄電池の温度が高いと短くなる場合があります。
蓄電池が弱ると、燃料も発電機も正常なのにエンジンを回せず、停電時に電気を送れません。この記事では、始動用蓄電池の役割、消防庁の点検要領で確認する比重・液面・電圧の基準、6年周期の負荷運転を省略する予防的な保全策との関係、交換にかかる費用と納期、交換しても始動しないときの判断を、施設管理者向けに整理しました。
目次
非常用発電機の蓄電池の交換時期
始動用蓄電池の交換時期は、蓄電池の形式ごとに示される期待寿命で判断します。GSユアサは据置鉛蓄電池の期待寿命を、HSシリーズで5〜7年、MSEシリーズで7〜9年と公表しています。
| 示している主体 | 形式 | 交換時期の目安 |
|---|---|---|
| 蓄電池メーカー(GSユアサ公表の期待寿命) | HSシリーズ | 5〜7年 |
| 蓄電池メーカー(GSユアサ公表の期待寿命) | MSEシリーズ | 7〜9年 |
| 発電機の点検会社(ロジエイティブ公表) | HS型 | 5〜6年を目途に交換 |
| 発電機の点検会社(ロジエイティブ公表) | MS型 | 8年を目安に交換 |
| 発電機の点検会社(ロジエイティブ公表) | REH型 | 4〜6年の交換推奨 |
メーカーの期待寿命は、蓄電池温度25℃・0.1C10Aで使った場合の年数で、用途や温度によって実際の寿命は短くなる場合があると注記されています。点検会社の目安は形式の呼び方と年数がメーカーの表記と一致しないため、自施設の蓄電池の形式は、本体の銘板で確認してください。
非常用発電機の蓄電池の役割
始動用蓄電池とは、停電を検知した非常用発電機のエンジンを、セルモーターで回し始めるための電気をためておく蓄電池です。停電中は商用電源が使えないため、始動と制御に使う電気をこの蓄電池が受け持ちます。
消防庁の点検要領では、自家発電設備の始動用蓄電池設備に「自家発電設備始動用」の表示があることを確認項目にしています。建物の非常照明などに電気を送る蓄電池設備とは役割が違い、発電機の付属装置として管理されます。
停電の瞬間から電気を切らさない用途の蓄電池設備やUPSとの違いは、非常用発電機の仕組みの記事で比較しています。
蓄電池の点検で確認する基準
消防法の点検では、始動用蓄電池設備は「蓄電池設備の点検要領に準じて確認する」とされ、原則として蓄電池設備の点検票を添付します。数値で合否が決まる項目があるため、報告書に測定値が書かれているかを確認してください。
| 点検項目 | 消防庁の点検要領の判定基準(要旨) |
|---|---|
| 外形 | 全セルの電槽やふたに変形・き裂・漏液がない。制御弁式据置鉛蓄電池は交換時期を確認し、期限内であること |
| 電解液の比重 | 20℃換算でCS形1.205以上、HS形1.230以上。各セル間に0.03以上の差がない |
| 電解液の温度 | 45℃以下で、各セルが全セル平均の±3度以内 |
| 電解液面 | 全セルの液面が最高液面線と最低液面線の中間にある(液面が見えないシール型は省略可) |
| 総電圧 | 製造者が指定する充電電圧値の±1%以内 |
| 表示 | 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)の表示、または登録認定機関の認定証票がある |
点検要領は、液面が最高液面線から最低液面線まで下がるには夏期でも2か月以上かかるとしています。それより早く減る場合や、一部のセルだけ減りが大きい場合は故障と考え、蓄電池設備整備資格者に修理や整備を依頼する対応を求めています。
施設側で日常に見ておく点
専門の測定をしなくても、外観の変化は担当者が気づけます。巡回のときに次の点を見て、異常があれば点検日を待たずに連絡してください。
- 蓄電池の本体に膨らみ、ひび、液漏れの跡がないか。
- 端子の周りに白い粉状の腐食が出ていないか。
- 制御盤の充電表示や警報表示に異常が出ていないか。
- 銘板や点検記録で、製造からの年数が期待寿命に近づいていないか。
蓄電池の交換と予防的な保全策
始動用蓄電池は、消防庁が定める「運転性能の維持に係る予防的な保全策」で交換すべき部品の1つに挙げられています。推奨交換期間内に交換しているかどうかが、6年に1回の負荷運転の扱いに関わります。
予防的な保全策とは、予熱栓などの項目を1年ごとに確認し、あわせて潤滑油・冷却水・燃料フィルター・潤滑油フィルター・ファン駆動用Vベルト・冷却水用等のゴムホース・シール材・始動用の蓄電池を、製造者が設定する推奨交換期間等以内に交換することをいいます。
蓄電池だけ交換期限を過ぎていると、ほかの部品を交換していても保全策を講じたことになりません。交換した年月は点検票の予防的な保全策の欄に記録し、次の交換予定と並べて管理してください。負荷運転と内部観察等の周期は負荷試験の記事で解説しています。
蓄電池交換の費用と納期
始動用蓄電池の交換費用は、蓄電池本体の価格に技術者の作業費と交通費が加わります。掲載会社のロジエイティブは、本体を1個あたり約3万〜7万円とし、技術者2名の労務費と交通費を含む諸経費が別にかかると公表しています。
| 費用・期間の項目 | 公表されている内容(ロジエイティブ) |
|---|---|
| 蓄電池本体 | 1個あたり約30,000〜70,000円(防災認定品) |
| 作業費 | 技術者2名の労務費(1日拘束) |
| その他 | 交通費を含む諸経費 |
| 作業内容 | 充電器の電圧測定と調整、短絡防止の対策、交換後の試運転調整 |
| 納期の目安 | メーカーや型式により1.5〜6か月(受注生産)。災害後は1.5〜2倍に延びる場合がある |
費用より注意したいのは納期です。受注生産のため、点検で電圧不足を指摘されてから発注すると、交換までの数か月は始動できないおそれを抱えたまま過ごすことになります。期待寿命の1年ほど前に見積もりを取り、年次点検の時期に合わせて交換を計画してください。
自動車用のバッテリーと同じ感覚では選べません。点検要領は、蓄電池設備の基準に示された表示か、登録認定機関の認定証票があることを確認項目にしています。
蓄電池を替えても始動しないとき
蓄電池を新しくしても始動しない、またはすぐに電圧が下がる場合は、蓄電池以外に原因があります。充電器や制御盤の不具合、セルモーター側の故障が考えられるため、蓄電池の交換を繰り返す前に原因を切り分けてもらいます。
劣化した蓄電池を使い続けると、充電器に負担がかかり、制御基板にまで影響が広がることがあると点検会社は注意を促しています。部品の供給が終わった古い機種では、修理できないまま停電を迎える事態もあり得ます。
修理と部品交換の費用が重なってきたら、更新も比較に入れてください。点検と修理の依頼先はメンテナンス会社の比較、入れ替えを検討するなら設置・更新会社の比較が役立ちます。更新時期の考え方は耐用年数の記事、点検全体の項目は点検項目の記事、機種の系統はメーカー10社の比較表で確認できます。
非常用発電機の蓄電池のFAQ
非常用発電機の蓄電池は何年で交換しますか?
形式によって違います。GSユアサはHSシリーズの期待寿命を5〜7年、MSEシリーズを7〜9年と公表しています。25℃で使った場合の年数のため、機械室の温度が高い施設では早めの交換を計画してください。
蓄電池の交換は負荷運転の省略と関係がありますか?
関係があります。始動用の蓄電池は、予防的な保全策で推奨交換期間内に交換すべき部品に含まれています。交換期限を過ぎていると、6年に1回の負荷運転を省略する前提を満たさなくなります。
蓄電池の交換にはどのくらいの期間がかかりますか?
掲載会社のロジエイティブは、メーカーや型式により1.5〜6か月の納期を目安としています。受注生産のため、点検で電圧不足を指摘されてからでは間に合わないことがあり、早めの発注が必要です。
この記事を書いた人
執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部
非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。
最終更新:2026年9月12日
