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工場の停電対策は何から始める?非常用発電機とUPSの分担と停電時の対応

最終更新:2026年10月6日

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工場の停電対策は、発電機を選ぶ前に「止めてはいけない設備」と「許容できる停止時間」を決めるところから始まります。落雷による瞬時電圧低下は大半が0.05〜0.2秒ですが、それでも生産設備のマグネットスイッチやインバーターが止まることがあります。一方、2018年の台風21号では最大約240万戸が停電し、完全復旧まで約2週間かかりました。

秒単位の電圧低下と日単位の停電では、効く設備がまったく違います。この記事では、まず消防用の非常電源では守れない範囲を確認します。そのうえでUPSと非常用発電機の分担、停電時と復電時の対応手順、中小企業が使える税制までを、工場の設備・総務担当者向けに整理しました。

目次
  1. 工場の停電対策で最初に決めること
  2. 工場の停電で起きる被害
  3. 工場の消防用非常電源の限界
  4. 工場の停電対策は設備で分担する
  5. 工場で止める設備と残す設備
  6. 工場の停電対策の発電機の選び方
  7. 工場の停電時の対応手順
  8. 工場の復電時の対応
  9. 工場の停電対策の費用と税制
  10. 工場の停電対策を点検と訓練で保つ
  11. 工場の停電対策の相談先と見積もり
  12. 工場の停電対策のFAQ

工場の停電対策で最初に決めること

工場の停電対策で最初に決めるのは、設備ごとに許容できる停止時間です。一瞬も止められない設備、数十秒なら待てる設備、止めても再開できる設備に分けると、UPS・発電機・手順のどれで守るかが決まります。

工場の停電対策で最初に決めること
停止の許容設備の例主に守る手段
一瞬も止められない制御用PC・PLC、生産管理サーバー、通信機器UPS(無停電電源装置)
数十秒なら待てる冷凍・冷蔵設備、排水ポンプ、照明の一部自動始動の非常用発電機
長く止まると損害が出る温度管理が必要な原料や仕掛品、保温が必要な炉や槽発電機の容量と燃料の備蓄
止めても再開できる一般の加工機、空調、事務所のコンセント安全な停止と再起動の手順

表の例は一般的な目安で、同じ設備でも扱う製品によって区分は変わります。全設備を発電機で動かそうとすると、容量と燃料、設置場所がすべて大きくなります。設備ごとに止まった場合の損害を、品質・安全・納期の3つの観点で見積もると、守る範囲を経営層と合意しやすくなります。

この仕分けは、後で発電機の容量を計算してもらうときの負荷一覧にもなります。設備名・定格出力・起動方式・停止の許容時間を1行ずつ書き出しておくと、メーカーや設計者との打合せが早く進みます。容量の算定方法は容量計算の記事で解説しています。

工場の停電で起きる被害

工場の停電は、0.2秒前後の瞬時電圧低下から、復旧まで約2週間かかった広域停電まで幅があります。続く時間によって止まる設備と損害の中身が変わるため、対策も時間の長さで分けて考えます。

工場の停電で起きる被害
停電の種類続く時間工場で起きやすいこと
瞬時電圧低下(瞬低)大半が0.05〜0.2秒、最長で2秒程度マグネットスイッチ式の生産設備やポンプ、サイリスタ式の可変速モーターが止まる
短時間の停電数分から数時間ラインの停止、仕掛品の不良、保存していないデータの消失
広域の停電数日から約2週間の例電力会社の復旧を待つ間、自前の電源と燃料で持ちこたえる必要がある

九州電力送配電によると、瞬時電圧低下は送電線に雷が落ちたとき、停電範囲の拡大を防ぐために送電線を切り離すまでのごく短い時間に起きます。高電圧の系統ほど影響は広く、現在の技術では落雷の影響を完全に防ぐことはできないとされています。

どの機器が何秒の電圧低下で止まるかは、機種と負荷の状態で変わります。北陸電力も、機器の特性を示した図は実測の一例で、メーカーの保証値ではないと注記しています。自社の設備が瞬低で止まるかは、設備メーカーに確認してください。

広域停電の例として、2018年9月6日の北海道胆振東部地震では、午前3時7分の地震発生から18分後の午前3時25分に北海道全域が停電しました。同じ年の台風24号でも最大約180万戸が停電しています。経済産業省の取りまとめによると、台風21号と24号はいずれも完全復旧まで1週間以上かかりました。

停電の損害は、ラインが止まった時間だけでは済みません。再起動までの立ち上げ時間、仕掛品の廃棄、炉や金型の温度の戻し、取引先への納期の連絡まで含めて見積もってください。

工場の消防用非常電源の限界

工場に消防用の非常電源があっても、それだけでは生産設備を守れません。消防法の非常電源は消火栓ポンプなどの消防用設備等を動かすためのもので、屋内消火栓設備なら有効に30分間以上作動できる容量が基準です。

工場は消防法施行令の別表第一(12)項イ「工場又は作業場」に当たり、特定防火対象物を定める施行令34条の4には含まれていません。そのため、屋内消火栓設備の非常電源は、自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のほか、非常電源専用受電設備も選べます(消防法施行規則12条1項4号)。

非常電源専用受電設備とは、電力会社から受けた電気を消防用設備等の回路へ専用に送る受電設備です。発電も蓄電もしないので、広域の停電では電気を送れません。店舗などが入る複合用途の建物(別表第一(16)項イ)は特定防火対象物に当たり、延べ面積1,000㎡以上では原則として受電設備を選べない点も押さえておきましょう。

工場の消防用非常電源の限界
項目消防用の非常電源工場のBCPで要る電源
目的消火・避難のための消防用設備等を動かす生産・品質・安全のための設備を動かす
運転時間屋内消火栓設備なら30分間以上作動できる容量停止の許容時間と燃料補給の見込みから自社で決める
立ち上がり自家発電設備は停電から電圧確立・投入まで40秒以内瞬時の停止が困る設備はUPSで補う
給電先消防用設備等の回路生産設備や冷凍設備など自社で選んだ負荷

東京消防庁の停電時の出火防止対策は、非常電源から一般の負荷へ電気を送る目的の不正な結線変更を禁止しています。消防用の発電機を生産設備に回すのではなく、守りたい設備のための電源を別に計画してください。自社の非常電源の方式は、消防用設備等の点検票と竣工図で確かめられます。消防用の基準は設置基準の記事で整理しています。

工場の停電対策は設備で分担する

工場の停電対策は、UPS・非常用発電機・瞬低対策の機器を組み合わせて分担します。UPSは停電の瞬間をつなぎ、発電機は始動後の長い時間をまかない、瞬低対策は短い電圧低下で設備が止まるのを防ぎます。

工場の停電対策は設備で分担する
手段守れる時間向いている設備注意点
UPS(無停電電源装置)停電の瞬間から電池が持つ時間まで制御用PC・PLC、サーバー、通信機器給電時間は電池の容量と負荷で決まる
非常用発電機燃料が続く限り冷凍・冷蔵設備、ポンプ、照明、重要なライン始動して電圧が安定するまで時間がかかる
瞬低対策の機器瞬時電圧低下の間マグネットスイッチ式の設備、可変速モーター長い停電には効かない
産業用蓄電池蓄電した容量の範囲照明、事務所、ピークカットとの兼用容量あたりの費用と設置場所

北陸電力は、瞬時電圧低下に対する機器ごとの対策として4つを挙げています。マグネットスイッチの開放を遅らせる遅延釈放型マグネット、電圧が戻ると運転に戻る自動再起動型インバーター、不足電圧継電器の動作整定の見直し、小容量のUPSです。いずれも製品と機器の保護に影響のない範囲で行う前提です。

発電機は始動して電圧が安定するまでに時間がかかるため、その間に止まると困る機器にはUPSを組み合わせます。併用するときは、UPSのバックアップ時間が発電機の給電開始までの時間を上回るかを設計段階で確認してください。

UPSで支える範囲を広げるほど、装置と電池の容量が大きくなります。設置場所と電池の更新費用も増えます。UPSは制御と情報の機器に絞り、動力は発電機で受け持つ分け方が基本です。

発電機とUPSの仕組みの違いは仕組みの記事で解説しています。ガスタービンとディーゼルの違いはガスタービンの記事をご覧ください。

工場で止める設備と残す設備

停電時に発電機で残す設備は、品質・安全・情報の損害が大きいものから選びます。止める設備を先に決めておくと、発電機の容量と燃料の量を必要な分に絞れるため、費用を抑える近道になります。

工場で止める設備と残す設備
区分工場の設備の例判断の目安
残す(安全)危険物・高温設備の監視と冷却、排水ポンプ、非常照明止めると事故や火災のおそれがある
残す(品質)冷凍・冷蔵庫、恒温室、発酵や培養の設備温度が外れると原料や仕掛品を廃棄する
残す(情報)生産管理サーバー、制御用PLC、通信設備データの消失や復旧の遅れにつながる
止める(手順で守る)一般の加工機、空調、コンプレッサーの一部安全に止め、復電後に順番に起動する
止める(後回し)事務所のコンセント、休憩室生産と安全に直結しない

仕分けは設備担当だけで決めず、品質保証・生産管理・安全衛生の担当者と一緒に行うと漏れが減ります。冷凍設備のように停止から影響が出るまで時間がかかる設備は、何時間まで止めてよいかも書いておきましょう。

仕分けの例を挙げます。冷凍原料を扱う工場なら、冷凍庫は品質の区分で残します。加工ラインは止め、復電後に点検してから順番に再開します。排水ポンプは浸水を防ぐため安全の区分で残します。このように設備ごとに理由を書いておくと、停電の当日に迷わず判断できます。

電動機は起動するときに定格より大きな電流が流れるため、起動方式も容量計算に効きます。インバーター駆動か直入れ始動かを負荷一覧に書き添えると、提案された容量の根拠を確かめやすくなります。

工場の停電対策の発電機の選び方

工場の停電対策で発電機を選ぶときは、容量・燃料・設置場所・届出の順に決めます。本体の公表価格は容量20/25kVAで404万円、80/100kVAで824万円が目安です(積算資料公表価格版2026年9月号・税別)。ここに工事費が加わります。

工場の停電対策の発電機の選び方
決めること確認する内容関係する基準
容量負荷一覧の合計と起動時の電流設計者による容量計算
燃料必要な運転時間と補給の手段軽油の指定数量は1,000L。5分の1以上は少量危険物
設置場所浸水の高さ、騒音、排気、搬入経路屋外は外箱の構造、屋内は離隔と換気
届出発電機の出力と燃料の量出力10kW以上は保安規程の届出と電気主任技術者の選任
運用点検、燃料の入れ替え、訓練消防用と兼ねる場合は法定点検の対象

燃料の備蓄量は、守る負荷を何時間動かすかと、燃料を届けてもらえるまでの日数で決まります。平成30年7月豪雨では電源車の燃料が不足する見込みとなり、経済産業省が石油販売業の団体に支援を要請しました。広域の災害では燃料の調達も遅れる前提で、補給先を複数確保しておくと安心です。

ガスエンジンやガスタービンでガス燃料を使う場合は、ガスの供給が止まると運転できません。供給の継続性と、止まった場合の代わりの手段を確かめておきます。

浸水のおそれがある工場では、発電機を置く高さが重要です。ハザードマップで想定される浸水の深さを確かめましょう。発電機と燃料タンク、切替盤をその高さより上に置けるかを検討します。

屋外型は外箱が付いていて置きやすい反面、騒音と排気の向き、浸水の高さを確かめる必要があります。設置場所の条件は設置基準の記事、燃料の扱いは燃料の記事、手続きは届出の記事で確認できます。

常設の発電機を置く余地がない場合や、まず短期間で備えたい場合は、停電時にレンタルの発電機を持ち込む方法もあります。東京消防庁は、移動式の発電機を持ち込んで作業を続けるときは、周囲への延焼防止と監視を徹底するよう求めています。接続する盤と燃料の置き場所も、事前に決めておいてください。

工場の停電時の対応手順

工場が停電したら、まず人の安全と火災の防止を優先し、次に設備を安全に止めます。彦根市は、自動火災報知設備が停電から約10分、誘導灯が約20分で機能を失うおそれがあるとして、巡回と避難誘導の体制を求めています。

工場の停電時の対応手順
停電からの時間やること参考にした資料
直後閉じ込めやけが人の確認、危険物・高温設備の安全な停止東京消防庁、彦根市
約10分まで自動火災報知設備が止まる前提で巡回警戒と連絡体制を立てる彦根市(約10分で停止のおそれ)
約20分まで誘導灯が消える前提で避難誘導の体制を確認する彦根市(約20分で停止のおそれ)
約60分まで不燃性ガス等・粉末消火設備の手動操作の方法を確認する彦根市(約60分で自動放出が停止のおそれ)
停電中電熱機器や燃料ポンプ付きの設備のスイッチを切り、発電機の燃料と運転時間を見張る東京消防庁

表の時間は彦根市の資料が示す目安で、実際に止まるまでの時間は各設備の予備電源の仕様で変わります。自社の設備がどれだけ持つかは、消防用設備の点検会社に確認しておきましょう。

東京消防庁の指針は、停電中に自家発電設備が燃料切れまで運転したり、蓄電池設備が過放電したりして機能を損なわないよう、監視の徹底を求めています。発電機が動いている間は、燃料の残量と運転時間を記録する担当者を決めておいてください。

IP電話やFAX機能付きの電話など、一部の電話機は停電で使えなくなるおそれがあります。119番通報と社内の連絡手段を、停電でも使える方法で確保しておくことが大切です。手順は書面にして設備のそばに置き、訓練で確かめておくと、当日の判断が速くなります。

停電が長引いたときの判断の基準も、事前に決めておきましょう。たとえば「停電から1時間で復旧の見通しが立たなければ、生産を止めて取引先に連絡する」といった形です。電力会社の停電情報で復旧の見込みを確かめる担当者も決めておきます。発電機の燃料が何時間分残っているかと合わせて、補給を頼むかどうかを判断します。

工場の復電時の対応

停電が復旧したら、すぐに全設備を動かさず、消防用設備と危険物設備の状態を確かめてから順番に起動します。電動ポンプで燃料を送るボイラーなどは、復電と同時にポンプが動いて燃料が流れ出すおそれがあるため、停電中にスイッチを切っておきます。

工場の復電時の対応
順番確認すること
1消防用設備等と防災設備が通常の状態に戻ったか
2危険物施設や高温設備の機器に異常がないか(点検してから操業する)
3自家発電設備の停止と待機状態への切り替え、燃料の補給
4制御機器とサーバーの起動、データの欠落がないか
5電動機を持つ設備を、決めておいた順番と間隔で起動する

東京消防庁の指針は、復旧後に自家発電設備の運転を止めて待機状態に戻し、燃料を補給して早く次の停電に備えるよう求めています。復電で自動的に止まる機種もあるため、取扱説明書で動き方を確かめておきましょう。彦根市の資料も、危険物施設は停電の復旧後に機器等を点検してから操業するよう呼びかけています。

大きな電動機を一斉に起動すると起動時の電流が重なるため、起動の順番と間隔を手順書に書いておくと安心です。復電後は、停電の時刻と長さ、止まった設備、出た損害を記録します。この記録が、発電機の容量や燃料量を見直すときの材料になります。

発電機の運転性能は、法定点検の負荷運転や内部観察等で確かめます。点検の全体像は法定点検の記事、試験の方法は負荷試験の記事をご覧ください。

工場の停電対策の費用と税制

中小企業が工場の停電対策で発電機やUPSを導入するなら、事業継続力強化計画の認定を受けると特別償却16%の税制を使えます。中小企業防災・減災投資促進税制と呼ばれる制度で、計画の認定を受ける期限は令和9年3月31日です。

事業継続力強化計画とは、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。中小企業庁は、これを中小企業のための取り組みやすいBCPと位置づけています。

工場の停電対策の費用と税制
項目中小企業防災・減災投資促進税制(実施要領 令和8年7月16日版)
対象者青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人など)
措置特別償却16%
期限令和9年3月31日までに計画の認定を受け、認定日から1年以内に取得して事業に使う
自家発電設備機械及び装置は100万円以上、建物附属設備は60万円以上
無停電電源装置建物附属設備として60万円以上
対象外消防法・建築基準法で設置が義務づけられている設備、中古品、所有権移転外リース、国や自治体の補助金を受けて取得する設備

手続きの流れは3段階です。まず計画を作り、主たる事業所の所在地を管轄する経済産業局に認定を申請します。認定を受けてから1年以内に対象設備を取得し、税務申告では償却限度額の計算明細書を添付します。認定を受けた中小企業は、税制のほか金融支援や補助金の加点などの措置も受けられます。

消防法で設置が義務づけられた非常電源は対象外なので、この税制が使えるのは、BCPのために自主的に置く発電機やUPSです。認定を受ける前に取得した設備は対象にならないため、発注の時期に注意してください。大企業の子会社などは中小企業者等に当たらない場合があるので、実施要領で要件を確かめましょう。特別償却を使うかどうかは、その期の利益や資金計画で有利不利が変わります。経理担当者や顧問の税理士と、発注の前に相談しておくと安心です。

本体価格は仕様でも大きく変わり、同じ80/100kVA帯でも防音仕様では2,070万円の機種があります。工事費は搬入・基礎・配線・燃料設備で変わるため、各社に同じ負荷一覧を渡して見積もりを比べてください。価格の詳細は価格の記事にまとめています。

導入後は、点検と燃料の入れ替えの費用が毎年かかります。消防用と兼ねる発電機は、負荷運転または内部観察等を、予防的な保全策を講じた場合は6年に1回の周期で行います。

工場の停電対策を点検と訓練で保つ

工場の停電対策は、設備を置いただけでは機能しません。発電機が始動しない、UPSの電池が弱っている、手順を知る人がいない。こうした状態では、停電の当日に守りたい設備を守れないためです。

工場の停電対策を点検と訓練で保つ
対象確認の頻度主な確認内容
消防用と兼ねる非常用発電機機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回始動と運転、負荷運転または内部観察等
BCP用の非常用発電機保守契約とメーカーの推奨に合わせる試運転、燃料の量と劣化、始動用蓄電池
UPSメーカーの推奨に合わせる電池の劣化とバックアップ時間
停電時の手順書設備や担当者が変わるたび連絡先、停止と起動の順番、担当者
訓練自社で決めた周期切替の操作、手動で止める設備の確認

始動用の蓄電池が弱っていると、燃料が満タンでも発電機は動きません。蓄電池の交換時期の考え方は蓄電池の記事で整理しています。燃料も長く置くと劣化します。入れ替えの計画は保守会社と決めておきましょう。

訓練には、実際に受電を止めて発電機へ切り替える方法と、手順書を読み合わせる方法があります。生産を止めにくい工場では、設備工事などで計画的に停電させる日に合わせて切替を確かめると、操業への影響を抑えられます。

点検の記録は、停電の当日に設備が動くかを判断する材料になります。報告書に負荷運転の実施日と測定値が載っているかを確認してください。指摘事項があれば、次の予算に入れておきます。点検の中身は点検項目の記事で解説しています。

工場の停電対策の相談先と見積もり

工場の停電対策は、設備ごとに相談先が分かれます。発電機はメーカーや設置・更新の工事会社、点検は保守会社が窓口です。UPSや瞬低対策は機器のメーカーや電気工事会社、消防用設備の扱いは所轄の消防署に相談します。

工場の停電対策の相談先と見積もり
相談先相談できること渡す資料
発電機メーカー・設置会社機種の選定、容量計算、設置工事、更新負荷一覧、設置場所の図面、必要な運転時間
保守・点検会社法定点検、負荷運転、修理、燃料の入れ替え既設機の銘板情報、過去の点検報告書
電気工事会社・電気主任技術者受電設備との接続、切替盤、瞬低対策単線結線図、受電設備の情報
所轄の消防署消防用設備の非常電源の扱い、危険物の届出消防用設備等の点検票、燃料の量
経済産業局事業継続力強化計画の認定申請計画書、対象設備の一覧

相談の順番は、負荷一覧を作ってから発電機メーカーや設置会社に声をかけるのが効率的です。負荷一覧がないまま見積もりを頼むと、各社が別々の前提で容量を決めてしまいます。見積もりを比べるときは、各社に同じ負荷一覧と運転時間、設置場所の条件を渡します。前提がそろっていないと、容量や工事範囲の違いが金額の差に紛れ込みます。

「一式」とだけ書かれた見積もりは、本体・工事・試験・届出の代行のどこまでが入っているかを質問してください。更新の場合は、既設機の撤去と工事中の仮設電源の扱いも確かめます。

発電機の機種を比べるならメーカー10社の比較表が便利です。設置や更新の工事は設置・更新会社の比較、点検や修理の依頼先はメンテナンス会社の比較から探せます。

参照:e-Gov法令検索・消防法施行令/e-Gov法令検索・消防法施行規則/総務省消防庁・自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)/東京消防庁・停電発生時の出火防止対策/彦根市・工場・店舗の皆さんへ!大規模停電に備えて/経済産業省・電力レジリエンスワーキンググループ中間取りまとめ(2018年11月27日)/中小企業庁・事業継続力強化計画/中小企業庁・中小企業防災・減災投資促進税制の運用に係る実施要領/九州電力送配電・瞬時電圧低下/北陸電力・お客さまにおける瞬時電圧低下の対策/けんせつPlaza・ディーゼル発電機の価格(積算資料公表価格版2026年9月号 p.291)(2026年10月6日確認)

工場の停電対策のFAQ

工場の停電対策は何から始めればよいですか?

設備ごとに許容できる停止時間を決めることから始めます。一瞬も止められない設備はUPS、数十秒なら待てる設備は非常用発電機で守ります。止めても再開できる設備は、停止と再起動の手順で対応します。こう分けると、必要な容量と費用が見えてきます。

消防用の非常用発電機で生産設備を動かせますか?

前提にしないでください。消防法の非常電源は消防用設備等を動かすためのものです。東京消防庁は、非常電源から一般の負荷へ電気を送る目的の不正な結線変更を禁止しています。生産設備のための電源は別に計画してください。

瞬時電圧低下にも非常用発電機は効きますか?

効きません。瞬時電圧低下は大半が0.05〜0.2秒で、発電機が始動する前に終わります。UPSや遅延釈放型マグネット、自動再起動型インバーターなど、機器ごとの瞬低対策で備えます。

停電対策の発電機は税制の対象になりますか?

中小企業が事業継続力強化計画の認定を受け、計画に記載した自家発電設備やUPSを認定日から1年以内に取得すれば、特別償却16%の対象になります。消防法・建築基準法で設置が義務づけられた設備や、補助金を受けて取得する設備は対象外です。

この記事を書いた人

執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部

非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。

最終更新:2026年9月12日