非常用発電機の冷却水は、製造者が設定する推奨交換期間内に交換するのが基本です。消防庁の点検要領にある記入例では、冷却水の推奨年数の欄に「2」と書かれています。ただし、これは様式の書き方を示す例です。実際の年数は機種の取扱説明書で確かめてください。
冷却水は、年2回の機器点検でも汚れ・漏れ・水量を確認される項目です。交換を記録どおりに続けていると、消防法の負荷運転または内部観察等を6年に1回にできる条件の一部にもなります。この記事は、施設・工場・ビルの設備管理担当者に向けた内容です。冷却方式ごとの違い、点検基準の項目、冷却水ヒーターの確認方法、業者に相談する目安を順にまとめました。
目次
非常用発電機の冷却水の交換時期
非常用発電機の冷却水の交換時期は、法令が一律の年数を決めているわけではありません。消防庁の点検要領は、製造者が設定する推奨交換期間等以内に交換することを予防的な保全策の条件にしています。
| 部品 | 点検要領の記入例にある推奨年数 | 実際に決めるもの |
|---|---|---|
| 冷却水 | 2年 | 機種の取扱説明書・製造者の推奨交換期間 |
| 冷却水用等のゴムホース | 4年 | 同上 |
| ファン駆動用Vベルト | 4年 | 同上 |
| 冷却水系統などのシール材 | 4年 | 同上 |
| 冷却水ヒータ | 1年ごとに確認(交換ではない) | 点検要領の確認方法 |
上の年数は、点検要領の別添にある「交換・整備履歴表」の参考例から写したものです。架空の設備で書き方を示した例なので、自社の設備にそのまま当てはめないでください。
非常用発電機の冷却水交換を記録に残す理由
冷却水の交換記録は、予防的な保全策を講じていることを示す書類として、消防への点検報告に添付します。点検要領の記入例には、部品ごとに推奨年数、前回の交換年月、今回の実績を書く欄があります。交換した年月が分からないと、保全策を講じたことを書類で示しにくくなります。
周期の考え方は負荷試験の記事、報告の頻度は法定点検の記事にまとめています。
非常用発電機の冷却水の役割と冷却方式
非常用発電機の冷却水は、エンジンの熱を運び出して温度を保つための液体です。冷却水が足りない、あるいは劣化していると、運転中に温度が上がります。水冷式では保護装置が働き、発電機が止まることがあります。
冷却水とは、水冷式のエンジンの内部とラジエーターなどの間を循環し、燃焼で生じた熱を外へ逃がす液体のことです。多くの機種では、水にロングライフクーラント(LLC)を混ぜて使います。
| 冷却方式 | 冷却水の扱い | 点検要領で見るところ |
|---|---|---|
| ラジエーターで冷やす水冷式 | ラジエーターと配管の中を循環する | ラジエーター本体の漏水・内部の汚れ・冷却水の水量 |
| 専用の冷却水タンクを使う水冷式 | タンクから給水して冷やす | タンクの水量・自動給水装置の作動・出入口弁の開 |
| 空冷式(自己空冷式のガスタービンなど) | 冷却水を使わない機種がある | 冷却水の項目は該当しない。換気の状況は機器点検で確認する |
冷却水を使わない方式を検討する場合は、ガスタービンの記事で据付条件もあわせて確認してください。
非常用発電機のクーラントの濃度
LLCの種類と濃度は機種ごとに指定があります。デンヨーはよくある質問で、同社製品にノンアミン系のLLCを使うよう案内しています。希釈濃度は30%が適正という説明です。薄いと不凍性能が落ち、濃すぎると冷却性能が落ちるとしています。
他社の機種では指定が違う場合があるため、補充や交換の前に取扱説明書の銘柄と濃度を確認します。
非常用発電機の冷却水の点検項目
消防法の点検基準では、機器点検で冷却装置と冷却水タンクを確認します。見るのは、ラジエーターや配管の変形・損傷・漏れ、冷却水の著しい汚れや腐敗、タンクの水量です。
| 点検 | 点検基準・点検要領の項目 | 判定の内容 |
|---|---|---|
| 機器点検 | 冷却装置(ラジエータ、配管等) | 変形・損傷・漏れ、冷却水の著しい汚れ又は腐敗等がないこと。内部に汚れがあれば内部洗浄を指示する |
| 機器点検 | 冷却水タンク | 変形・損傷・漏水・内部のさびがなく、規定量が確保されていること |
| 機器点検 | 水の浸透 | 発電機室やキュービクル内に冷却水配管等からの漏水がないこと |
| 機器点検 | 保護装置 | 水冷式は「冷却水断水又は冷却水温度上昇」で原動機停止・遮断器断・表示・警報が出ること |
| 機器点検 | 運転性能(無負荷5〜10分) | 各部の温度や冷却水圧が製造者の指定する値と大差ないこと |
| 総合点検 | 運転性能(負荷運転または内部観察等) | 内部観察等を選ぶ場合は、冷却水の成分分析等で腐食・劣化がないこと |
機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回が基本です。点検項目全体の流れは点検項目の記事で解説しています。
非常用発電機の冷却水タンクは運転時間で見る
点検要領は、専用の冷却水タンクの水量について判定基準を示しています。定格出力で連続運転できる時間以上に十分な水量があることです。燃料の備蓄量と同じく、何時間動かす設計かを先に把握しておくと判定がぶれません。
燃料側の考え方は燃料の記事を参照してください。
冷却水の交換と成分分析の違い
冷却水を交換しただけでは、消防法の内部観察等を実施したことにはなりません。消防庁の質疑応答によると、この点検の目的は成分を分析して設備内部の異常を確かめることです。そのため、交換を行うだけでは点検にならないと答えています。
| 冷却水の交換 | 冷却水の成分分析 | |
|---|---|---|
| 目的 | 劣化した冷却水を新しくする | 抜き取った冷却水から内部の腐食や劣化を見つける |
| 消防法上の位置づけ | 予防的な保全策の一つ | 総合点検の運転性能(内部観察等)の一つ |
| 主な確認項目 | 製造者の推奨交換期間を守ったか | PH・全硬度・電気伝導率・蒸発残留物などが製造者の指定値範囲内か |
| 対象 | 冷却水を使う機種 | 水冷式の内燃機関に限る |
成分分析で指定値範囲を外れた項目があれば、異常がある部位を清掃・修理・交換します。分析に使う冷却水は少量の抜き取りで足ります。交換と同じ日にまとめて頼めるかを、見積もりの段階で確認しておくと手戻りが減ります。
非常用発電機のラジエーター内部の汚れ
点検要領は、ラジエーター内部に汚れがある場合は内部洗浄を指示するとしています。洗浄は、洗浄剤を入れて所定時間運転し、排水したあとに新しい冷却水を入れる方法です。
消防庁の検討会資料には、ラジエーターは推奨交換年数ではなく状態を見て保全する部品と整理されています。見た目の漏れだけでなく、内部の汚れの指摘も記録しておきましょう。
冷却水ヒーターとゴムホースの確認
冷却水ヒーターは、予防的な保全策で1年ごとに機能を確認する装置です。ヒーターのケース外周や近くの配管に触れて他の部位より温かいこと、テスタで断線がないことを確かめます。
| 対象 | 予防的な保全策での扱い | 確認・交換の内容 |
|---|---|---|
| 冷却水ヒータ | 1年ごとに確認 | ケース外周や近傍の配管の温度、テスタによる断線の有無 |
| 冷却水 | 推奨交換期間内に交換 | 製造者の推奨交換期間 |
| 冷却水用等のゴムホース | 推奨交換期間内に交換 | 製造者の推奨交換期間 |
| ファン駆動用Vベルト | 推奨交換期間内に交換 | 製造者の推奨交換期間 |
| 冷却水系統などのシール材 | 推奨交換期間内に交換 | 製造者の推奨交換期間 |
冷却水ヒーターが付いていない設備では、この確認は不要です。自社の発電機にヒーターがあるかどうかは、点検報告書や取扱説明書の部品表で確認できます。
非常用発電機のラジエーター故障は何年目に多いか
消防庁の検討会資料は、部品の交換実績7,388件を紹介しています。日本内燃力発電設備協会が部品出荷記録から整理したものです。ラジエーターの故障交換112件のうち、使用6年以内は2件(1.8%)で、いずれも5年目の冷却水漏れでした。
ゴムホースは49件のうち使用6年以内が1件(2.0%)で、4年目の冷却水漏れです。どちらも無負荷運転などで確認できる内容とされています。資料のグラフでは、交換件数の多くが使用7年目以降に分布しています。
冷却水の補充や漏れの相談目安
冷却水の補充が続く、床に漏れの跡がある、運転中に水温の警報が出た場合は、点検会社に相談する目安です。点検要領も、発電機室やキュービクル内の冷却水配管からの漏水を機器点検で確認する項目にしています。
- 冷却水タンクの水量が、点検のたびに規定量を下回っている
- 発電機の下や配管の継手に、冷却水が乾いた跡がある
- 試運転で冷却水温度の上昇による警報や停止が出た
- ゴムホースにひび割れや膨らみがある
- 交換した年月が記録から分からない
補充は機種が指定するLLCと濃度で行います。補充と交換は別の作業なので、補充した日と量も記録に残してください。負荷運転のあとは、消費した燃料と冷却水が補給されることを確認するよう点検要領に書かれています。
非常用発電機の冷却水と断水への備え
消防庁の資料は、日本内燃力発電設備協会による東日本大震災の調査を引用しています。震度6強以上の地域にあった4,811台のうち、「断水」を原因とする不始動が1台、異常停止が9台でした。
給水に頼る方式の設備では、断水時に何時間運転できるかを設計図書で確認しておくと安心です。停電時の運転時間の見直しは容量計算の記事も参考になります。
冷却水の管理を依頼する会社の選び方
非常用発電機の冷却水の管理は、消防法の点検と部品交換を同じ会社に頼めるかで手間が変わります。見積もりでは、交換・成分分析・冷却水ヒーターの確認・報告書への添付までを一覧で出してもらいましょう。
| 確認すること | 見積もりで聞く内容 |
|---|---|
| 対応範囲 | 消防法の機器点検・総合点検と、冷却水やゴムホースの交換を一括で頼めるか |
| 成分分析 | 冷却水の成分分析を内部観察等として実施し、結果を書面で出すか |
| 予防的な保全策の書類 | 交換・整備履歴表を作成し、消防への報告に添付できる形で渡すか |
| 電気保安との調整 | 保安規程に基づく点検と日程を合わせられるか |
非常電源の自家発電設備は、電気事業法の自家用電気工作物にも当たります。点検要領は、保安規程に基づく維持管理と同時に点検を計画するのが適当としています。保安規程と届出の関係は届出の記事、点検費用の内訳は点検費用の記事にまとめました。
依頼先を探す場合はメンテナンス会社の比較をご覧ください。ラジエーターの劣化などで入れ替えを考える段階なら、設置・更新会社の比較が役立ちます。機種の系統はメーカー10社の比較表で確認できます。
非常用発電機の冷却水のFAQ
非常用発電機の冷却水は何年ごとに交換しますか?
法令で一律の年数は決まっておらず、製造者が設定する推奨交換期間内に交換します。消防庁の点検要領にある記入例では推奨年数が2年です。ただし記入例なので、実際の年数は機種の取扱説明書で確認してください。
冷却水を交換すれば内部観察等の点検を省けますか?
省けません。消防庁の質疑応答では、この点検の目的は冷却水の成分を分析して内部の異常を確かめることとされています。交換を行うだけでは内部観察等を行ったことにはなりません。
冷却水ヒーターは交換が必要ですか?
予防的な保全策では、冷却水ヒーターは1年ごとに機能を確認する対象です。ケース外周や近くの配管が他より温かいこと、テスタで断線がないことを確かめます。異常があれば、点検会社に修理や交換を相談してください。
この記事を書いた人
執筆・編集:非常用発電機ナビ 編集部
非常用発電機の導入・更新・メンテナンスを検討する施設管理者のための比較ガイドです。会社情報は各社公式サイト、制度の説明は行政の公表資料を参照し、対応範囲と依頼前の確認事項を整理しています。
最終更新:2026年9月12日
